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っていると、4月、5月などはウグイスの声か聞こえてくる、そんな幸せを毎日タダで味わうことができる。本当はやってみたら楽しさがわかる。ボランティアも同じということです、だから今の方は「立派だ、けれど私にはやれない、物好き」と、そういうタイプになります。
その次に登場してきた人は「私、ちゃらんぽらんなんです」と、言わなくても見ればすぐ分かるという感じの方なんです。顔つきというより存在そのものが、ちゃらんぽらんが服を着たような方なのです。34〜35歳の奥さん。「私ちゃらんぽらんで何もやってこなかったんで」と言われます。彼女の住んでいる団地では、だいたい昼間奥さん連中がパートに出たり、カルチャー・スクールに行ったりしてみんないなくなるそうです。「何もしていない私ぐらいが残るんだ」。それで雨の日に行くところがなく新聞を見ていると、そこに「コープ札幌」がボランティアで暮らしの助け合い活動をしている記事が出ていて、「これだったら私もやれるかもしれない」と思い、「コープ札幌」の本部に行ったそうです。コーディネーターという人が「こういうことをやるんですよ」と説明しました。「ああ、私駄目だわ、C会員、賛助会員、年間3000円出すからそれでいいです」と言いました。それでもコーディネーターが「まあそう言わずに見るだけ見てって」と言いました。それで「私、気がついたら車に乗せられてたんです」。
そうやってコーディネーターの人に車に乗せられて「今日これから行くところは寝たきりのおじいさん、病弱なおばあさん2人の世帯で、だからとても困っているところです」と、訪問先で降ろされて、「私じゃあ、次ちょっと用事あるからね」と言ってコーディネーターの人はいなくなったそうです。それで「気がついたら私、台所で大根切ってたんです」。だけど、こんなこといつまでもやってられないと思い、今日はご飯つくって帰るけど今日だけにしようと思い、帰る時になったら「じゃあ、またね」と言われて「はーい」と答えてしまった。「またね」と言われて「は一い」と言ったから、今度も行かなくてはと思いまた行ったそうです。それでまた台所で大根切っているうちに、ああこんなこといっまでもできない、今日限りにしようと思い、ご飯をつくって帰る時に『じゃあ、気をつけてなあ」と寝たきりのおじいちゃんに言われた。気をつけてあげなければいけないのはおじいちゃんの方なのに、その人に「気をつけてね」と言われたら「はい、わかった」と、また行くようになってしまった。
そうやって通っているうちに、そのおじいちゃんがもう半年だか1年だかお風呂に入ってないということがわかりました。それで「入浴サービス」というのをしている事は聞いていたので、札幌市役所に電話したら(していません」と言われた。次に札幌の社会福祉協議会に電話をしたら「やってます」と言うので申し込み、入浴車に来てもらった。2人の担当者とその人とおばあちゃんも一緒になり、お風呂に入れてあげたら、おじいちゃんが涙を流して「ああ極楽、極楽」と、その姿を見たら「私、足抜けなくなっちゃったんです」。
この人だと思いました。私だったらもっとできると思うような方なので、これならば私にはできないと決して思いません。誰が見ても、この人にできるのであれば、どこか空気が抜けているという感じの方ですが、そういう方がそうやってしているうちに足が抜けなくなってしまい、それなりにやり甲斐をもった。これだと思いました。それでその後も、生協のコーディネーター研修などで話をする時に、必ずこの例を出しました。

 

 

 

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